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大手SIerに学ぶ、AIネイティブな組織へ生まれ変わるためのヒント

MEDIA TIE-UP#06

大手SIerに学ぶ、AIネイティブな組織へ生まれ変わるためのヒント

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AI時代に突入し、さまざまな業務がAIに取って代わられると言われている。なかでも、コーディングやプログラミングといったソフトウェアエンジニアリングの領域は特に危ういと指摘されてきた。大量のコードを書くことを担ってきたSIerは、もはや不要になるのか。

しかし、大手SIerのTISで生成AI戦略を牽引する油谷実紀氏は「SIerがやることの本質は変わらない」と語る。

AI時代の事業開発や組織変革を支援する梶谷健人氏と油谷氏の対談から、AIネイティブな組織へと変わるためのヒントと、人や組織がAI時代にどう価値を発揮するかという問いへの答えが浮かび上がってきた。

AI導入の「壁」をどう越えるか

AI時代が来ると言われてきて、多くの企業がAI導入を進めています。しかし、それが成果につながらないケースも多く聞かれます。この「壁」の正体は何だとお考えですか。
梶谷
失敗パターンは明確で、トレンドドリブンで動いてしまっていることです。経営企画やAI推進部署が「今こういうことができる」「このサービスが流行っているからうちも導入しよう」と旗を振るケースが多いですが、一定の自動化フローは組めたとしても、それだけでは本質的な価値は生まれません。
重要なのは課題ドリブンで考えること。社内の業務プロセスを棚卸しして課題を特定し、ワークフローに落とし込む。このITコンサル力こそが重要です。
ところが、AI推進室をつくるとなると「AIが好き」な人を集めがちで、内輪で盛り上がるだけになりやすい。本当に必要なのは、現場の業務を棚卸しして課題を特定できるオペレーション設計力の高い人材です。
株式会社POSTS 代表取締役 梶谷 健人
油谷
同感です。生成AIだけを切り出す話ではなくて、業務プロセス全体を俯瞰した上で、どこにAIを使うかを考えないといけません。
当社では、AIもロボットもあくまで手段の1つとして捉え、DXコンサルティングを担当している事業部が担うという体制になっています。
「AIをどう使うか」ではなく「顧客の課題をどう解くか」。その順番を明確にする必要があったのです。
TIS株式会社 技術本部兼ソーシャルイノベーション事業部 エグゼクティブフェロー 油谷 実紀
「PoCで終わる」という声も多く聞きます。
梶谷
「PoC止まり」は、ミッションの持たせ方の問題です。
AIの活用自体を至上命題にしている部署は、それではダメだとわかっていてもAIを使うこと自体が目的化しやすい。そうではなく、組織の成り立ちやミッション設計の段階から「AIは手段である」ということがメンバーの頭に自然とインストールされている状態をつくるべきです。
油谷
手段が目的化するのを防ぐために、TISではそもそもAI活用においてPoCという言い方をしていません。PoCと呼んだ瞬間、目的がPoCになってしまう。最初から本番の取り組みとして進めています。
ただし最初から本番でやる以上、短期的な成果が見えにくくても続ける覚悟がいります。
たとえば、議事録をAIでつくること自体は小さな改善に見えますが、議事録が共有されるようになると、議事進行の仕方が変わり、会議の質自体が上がっていく。そうした合わせ技で全体の効率化が進むのです。個別のKPIを厳密に求めすぎると、こうした波及効果が生まれる前に「効果なし」と判断されてしまいます。
梶谷
まさに計測の罠ですね。
計測しようとすると、わかりやすい量的指標に引っ張られてしまうんです。「何時間削減できた」は測れても、「議論の質が上がった」「サービスの質が底上げされた」といった質的な改善は数字に出にくい。
日本企業は特にレポートで数値を求める傾向が強いので、そこだけで判断すると本当の効果を見落としてしまいます。
成果で測りにくいとすると、何を指標にすればいいのでしょうか。
油谷
まずは「どれだけみんなが日常的に使い倒しているか」という先行指標を重視すべきだと考えています。
当社では「生成AIリテラシー向上研修」を全社員向けに展開しています。座学で終わらせず、後半に実際に触ってみるワークを入れて、自分の業務がどう変わるかを体感してもらう設計にしています。現在では週当たり7~8割の社員が日常的に社内AIチャットを利用するまでになりました。
一人ひとりの「これは使える」という実感が連鎖していくことが、組織全体を変えていく力になると思います。
梶谷
活用率を先行指標にするのは正しいと思います。
そして、その活用率を一気に引き上げるレバレッジポイントが、経営層の巻き込みです。私も企業から依頼をいただいて勉強会をやる際、何が何でもトップを巻き込んでもらうようにしています。
ポイントは、「AIをやらねば」という危機感と、「これはすごい」という実感をセットで提供すること。今の技術でここまでできるという事実を伝えるだけで適切な危機感が生まれますし、実際に触ってもらえば実感に変わる。この2つがそろうと、一気にスイッチが入るケースが多いです。
油谷
TISでも早い段階で役員を巻き込んでいきました。TISの役員は以前からAIを積極的に活用していたのですが、それに加えて役員会議に外部の方を招いて、現場のリアルな話をしてもらう機会も設けています。
実際、経営層の意識は変わりましたね。最初は「AIが普及するとSEの仕事がなくなるのでは」という漠然とした不安を感じていた人も、より深く学んでいくと、そんなシンプルな話ではないとわかってくる。
どこがAIの領域でどこが人間の領域か、その分担が見えてくると、冷静に前に進められるようになると思います。

AIの「責任を負える」プレイヤーが生き残る

組織としての土台づくりの他に、AIを事業やサービスそのものに組み込む段階があります。ここでの勘所は何でしょうか。
梶谷
AIサービスを検討する場合、「何をつくるべきでないか」を見定めることが大切です。今は地雷源がものすごく多い。つくっても1カ月後に無駄になるものばかりです。
たとえば、記事の作成をする場合、2026年2月に登場したClaude Codeの「Agent Teams」を使えば、リサーチから構成、執筆、編集まで複数のエージェントが分業するワークフローが一瞬でつくれてしまう。
以前はこうした仕組みだけでサービスとして売れていたのに、今はAIへの簡単な指示でできてしまいます。これを知らずに同じ領域で開発を進めるのは、地雷を踏むようなものです。
だからこそ、まずAIで何ができるかを徹底的に学んで地雷を排除する。そのうえで一旦AIを脇に置き、「何を解決すべきか」に立ち返る。この切り替えを意識しないと、目的と手段の逆転が起きてしまいます。
油谷
おっしゃる通りで、しかも先月と今月で地雷の場所が変わるんですよね。
SIerの立場で言うと、自社サービスだけでなく顧客システムへの適用という観点もあって、AIを使っていいのかどうかの判断がますます難しくなっています。
SIerは実績があり、リスクが見えている技術を重視する文化がありますが、AIは1カ月単位で前提が変わる。このスピード感の中でどこまでリスクを取るか。それ自体が今、大きな経営判断になっています。
実際、当社のモダナイゼーションサービス「Xenlon~神龍」では、旧言語から新言語への変換処理が100%ロジックで実現できていましたので、生成AIを使わないという判断をしました。ハルシネーションによる誤変換リスクがゼロにならない以上、確実性が最優先される領域では「使わない」ことも重要な設計判断です。
一方で、サービス開発の作業単体は確実に速くなっていますが、速くなったのは個々の作業であって、顧客システムを構築するケースの場合、お客様との合意形成や機能間の整合性といった判断のプロセスは残ります。
SIerのウォーターフォール開発に おける生成AI活用 TISの一例
開発現場でも上流と下流で状況は異なり、下流のコーディングは自動化が進む一方、当社が強みとする金融決済のようなミッションクリティカルな領域の上流は、そう簡単にはいきません。
今後はAIエージェントの活用とともに、開発プロセスそのものを再構築する段階に入っていくと考えています。
梶谷
すでに取り組んでいる企業と後回しにしている企業の差は、複利で広がっています。毎月の変化が差分で済む企業と、気づいたときには追いつけない「隠れた負債」を抱えてしまう企業、その分岐点は、今この瞬間にあると思っています。
AIで自動化できる領域が広がる中で、人や組織の価値はどこに残るのでしょうか。
梶谷
2つあります。1つは「泥臭い実行力」です。
複雑なインターフェースをそろえなければいけない、要件が散らかりすぎている。そうした泥臭い要素を知的体力と行動力でやりきる力です。AIによってそれ以外の部分がどんどん効率化される中で、この力の相対的な価値が上がっています。
もう1つは「信頼」です。たとえば、裏側のシステムを自動処理するミドルウェア的なサービスは、1〜2年後にはClaude Codeなどで機能的にはつくれてしまうでしょう。
しかし、それを自分でつくったあとの長期的な運用安定性や、壊れたときの責任を誰が負うのか。そこを引き受けられるかどうかで、代替されるプレイヤーと残るプレイヤーが分かれます。
油谷
運用の安定性と責任を引き受けるという意味での信頼は、SIerがもともと提供してきた価値そのものです。これはAI時代でも変わりません。
ただし、「AIが書いたコードの品質を誰がどう保証するのか」という課題は、業界全体にのしかかってきます。企画から運用まで一気通貫で責任を持てる体制があるかどうか。そこが問われています。

「Human-in-the-Loop」が前提の事業変革

AIエージェントの登場で、企業の業務やサービスのあり方そのものが変わるのでしょうか。
油谷
大きく変わります。今までは人間のワークフローの中に「ここをAIにやらせよう」と組み込む発想でしたが、今後は逆です。
基本はAIが最初から最後まで回して、確認が必要なところだけ人間が入る。いわゆる「Human-in-the-Loop(人間が輪の中に入る)」です。主役がAIに変わる以上、今の業務フローをそのまま使うわけにはいかない。フロー自体を設計し直す必要があります。
当社も、自社開発の生成AIプラットフォームやAIチャットボット「DialogPlay」を活用しながら、企画段階から運用まで伴走する体制を整えています。
最初から大きくつくるのではなく、段階的に広げながらお客様と一緒に改善サイクルを回し続ける。それがこの変化に対応するための現実的なアプローチだと考えています。
Human-in-the-Loopとは
梶谷
人間がワークフローの中のパーツになるんですよね。
つまり、UXの重心が変わっている。画面をどうデザインするかよりも、どの工程をAIに任せ、どのタイミングでどの粒度で人間にボールを渡すかという裏側のワークフロー設計こそがUXの本質になっています。
もちろん、間違いが許されない業務ではきちんとしたUIが欠かせませんが、何でもUIありきで考える時代ではなくなりました。
油谷
企業がサービスを届ける方法自体も変わります。
これまでのWebサービスは、ブラウザからリクエストが来て画面を返すものでした。それがMCP(生成AIと外部のデータやツールを接続できるプロトコル)やマルチエージェントの流れで、エージェントが外部のリクエストに直接応答する形になっていく。
すでにGoogleやOpenAIは、チャットから在庫検索、発注、決済まで完結するデモをつくっています。2〜3年で、すべての企業がこの変化への対応を迫られるでしょう。
変化のスピードが速すぎる中で、SIerの価値はどう変わっていくのでしょうか。
油谷
SIerがやることの本質は変わらないと思います。お客様の業務目的に対して最適なシステムを提案し、責任を持ってつくり上げて運用する。5年後もそこは同じです。
変わるのは方法です。人を大量に投入するのではなく、AIがつくるものにどう責任を持つかが問われるようになる。
加えて、エンタープライズではどのツールを使っていいか、どこにAIを適用するかというセキュリティの整理も常に必要です。そこは引き続きSIerが担う領域だと考えています。
梶谷
私自身もClaude Codeで全部仕事するようになりました。MCPですべてのツールを連携して、GeminiやChatGPTもサブエージェントとして起動する。1年前はまったく予想できなかった働き方です。
AIの世界は変化が激しいですが、油谷さんがおっしゃる「責任を持ってつくり上げて運用する」という部分は代替しようがない。つくれることと、つくったものに責任を持てることは、まったく別の話です。
油谷
1年前の知識がもう役に立たない世界で、来年どうなっているかもわかりません。その中でお客様に対する責任を果たし続けるには、我々自身が変わり続けなければなりません。だからこそ、変わり続ける覚悟と、それを支える仕組みを今つくれるかどうか、それがAIネイティブな企業への分岐点だと思っています。
執筆:村上佳代 編集:美濃島匡,野垣映二 撮影:小池大介 デザイン:田中貴美絵
NewsPicks Brand Designにて取材・掲載されたものを当社で許諾を得て公開しております。
2026-︎03-31 NewsPicks Brand Design

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