#02
伊藤 淳Atsushi Ito
TIS株式会社 ソーシャルイノベーション事業部クリエイティブデザイン部エキスパート
2019年入社。社会課題をクリエイティブな手法で解決するクリエイティブディレクションを担当。2023年3月に「WOOD DREAM DECK®︎」のプログラムを立ち上げ、地域の森林資源の循環利用により「都市集中・地方衰退」「低・脱炭素化」の解決を目指す。地域の合板を活用したサウナの構法を生み出し、ライフスタイルデザイン部門にてウッドデザイン賞2023を受賞する。
2019年入社。社会課題をクリエイティブな手法で解決するクリエイティブディレクションを担当。2023年3月に「WOOD DREAM DECK®︎」のプログラムを立ち上げ、地域の森林資源の循環利用により「都市集中・地方衰退」「低・脱炭素化」の解決を目指す。地域の合板を活用したサウナの構法を生み出し、ライフスタイルデザイン部門にてウッドデザイン賞2023を受賞する。
「地方をもっと楽しく魅力的な場所にすることで、日本全体の地域活性化を実現したい」と願うのは、TISのソーシャルイノベーション事業部クリエイティブデザイン部でエキスパートとして活躍する伊藤 淳。
社会課題を本質的に解決するため、地域住民の「したいこと」に着目しながら、地域活性化の実現を目指しています。本記事では、その伊藤の想いとビジョンを紐解きます。
日本の地方をもっと楽しく、魅力的な場所に
現在取り組んでいるお仕事の中で、ご自身が叶えたいと思っている願いは何でしょうか?
私が叶えたい願いは、日本の地方をもっと楽しく、魅力的な場所にすることです。地方は経済の活性化や人口減少といった多くの課題を抱えていますが、その根底には「楽しさ」が重要な要素として存在することに気づきました。
2023年3月に立ち上げた「WOOD DREAM DECK®︎」は、地域の森林資源を循環利用するプログラムで、「したいことから考えよう」というコンセプトで始めました。これは、環境のために「できること」ではなく、自分が「したいこと」を実現することで、結果として環境が良くなり、よりポジティブな気持ちで環境課題に取り組めるようになるという考え方です。
マイナスをゼロにするのではなく、ゼロからプラスを目指す課題解決を進めることで、最終的にはマイナスの課題も解消していく。このようなアプローチが今の社会に求められていると感じています。
その願いを抱いたきっかけや背景があれば教えていただけますか?
2019年に埼玉県秩父郡の横瀬町という人口8,000人程度の小さな町に移住し、私自身が地方に住む「当事者」になったことが背景にあります。
移住のきっかけは、前職で新しいサービスを企画する際、横瀬町の「よこらぼ」という官民連携プログラムに参加したことでした。このプログラムに参加していくうちに、大都市に住む大企業の一社員としての考えと、地域住民の考えとの間に何かギャップがあることに気がつきました。その後、何度か訪れるうちに、そのギャップが少しずつ埋まる感覚が得られたので、実際にその地域に住めばより深い洞察が得られるかもしれないと感じ、移住することにしました。
移住してから、かれこれ5年が経ちました。横瀬町の住民として日々生活し始めてからというもの、意外と地域住民は、お困りごとの解決よりも「楽しさ」を求めていることがわかってきました。そこで、私自身も「横瀬町を一番楽しむ町民」になることをスローガンとして日々活動しています。
共鳴する仲間との共創で、未来を切り拓く
ご自身が叶えたいと考えている願いに対して、どのような形で取り組まれていますか?
TISのリソースを駆使して、地域住民に新たな楽しみを提供する取り組みを社会実装しています。デジタルプロダクトのUI/UXデザインだけでなく、地域住民にどのような価値をもたらし、生活を豊かにするのかといった、新しいサービスの社会的な意義をデザインしながら形にしています。
例えば、日頃歩く機会が少なくなってきた40歳前後の横瀬町民をターゲットに、アプリを使用したウォークイベントを開催し、彼らが楽しんで歩きたくなるきっかけづくりのPoC(※1)を実施しました。コーヒーが100円安くなるだけでは楽しく歩くきっかけにならないという仮説から、150km歩かないと食べられない幻のラーメンを3,000円で購入するというストイックな体験を企画しました。その結果、狙い通りターゲット層の参加者から「楽しく歩くきっかけになった、次回も楽しみです」と好評をいただき、3ヶ月間におけるイベント参加者の合計歩行距離が14万kmにもなりました。
また、先ほど触れた「WOOD DREAM DECK®︎」では、横瀬町にDAO(※2)によって地域の森林資源を循環利用するコミュニティーを立ち上げました。web3を活用したトークン発行や、NFT(非代替性トークン)による木材利用の付加価値を高める取り組みに挑戦しています。
この取り組みを1年ほど続けてみた結果、地域産木材を活用したサウナやミーティングブース、カフェテーブルなどを企画できました。その結果、地域住民に喜んでもらうだけでなく、地域拠点の企業によるサウナの製品化につなげる経験ができました。
※1 PoC:Proof of Concept。新しい手法などの実現可能性を見出すために、試作開発に入る前の検証。
※2 DAO:Decentralized Autonomous Organization。特定の所有者や管理者が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進できる自律分散型組織。
※2 DAO:Decentralized Autonomous Organization。特定の所有者や管理者が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進できる自律分散型組織。
それらの取り組みの中で、困難に感じる部分はありますか?
直面する課題の一つは、私たちのご提案がこれまでにない新しいアイデアであることが多いため、その価値や実現可能性を理解してもらうのが難しい点です。新しいサービスを実装する意味や目的がしっかりと伝わらなければ、共感を得られず、周囲の協力を得るのが難しくなることがあります。
そのため、私たちは“確実性”よりも“納得性”を重視しています。「VUCAの時代」と言われる不確実性が高い現代では、社会の状況が常に移り変わりやすいため、数字だけを判断基準にすると迷いが生じがちです。数字のように確実性のある側面だけではなく、実現させたい未来のビジョンに納得してもらい、周囲を巻き込むことが重要だと考えています。
ご自身の職務を果たす上で、どういった部分にやりがいを感じますか?
私は、自分たちが描く未来に共感してくれる仲間と共創できる瞬間に最もやりがいを感じます。「WOOD DREAM DECK®︎」では他社メンバーと連携し、森林資源を活用したプロジェクトを多く手掛けています。共鳴する仲間と一緒にプロジェクトを進めることは、どのような成果が生まれるのかという期待で胸が膨らみます。
TISの理念にもあるように、お互いの想いを掛け合わせ、未来の景色に鮮やかな彩りをつけていく一連のプロセスそのものが、私にとって大きな喜びとなっています。
日本全体の地域活性化を実現させる、正のスパイラルの創出
今後、どのような領域、どのような関わり方で社会課題解決に貢献していきたいとお考えですか?
私の目標は、地方をより魅力的な場所に変え、地域全体を活性化させる良い循環を生み出すことです。持続的に社会課題を解決するには、地域に根差しながら、その地域の特色を活かしつつ楽しさを際立たせることが必要です。そうすることで、地域の魅力が創出され、それに共感した地域内外の人々が集まってさらに活性化する、正のスパイラルが生み出されます。
具体的には、地産地消の取り組みや、地域の自律的・分散的な活動を支える手段として、web3などの先進的なIT技術を積極的に活用します。こうした新しいIT技術を通じて、地域のニーズに合わせた社会実装を繰り返し、より魅力的で持続可能な地域社会の実現を目指していきます。
これまではコンセプトの検証が中心でしたが、最近では森林関連分野でビジネスの成果が表れ始めています。この成功が、他の企業が地方の社会課題に取り組むきっかけとなることを期待しています。
今後もTISの強みを武器に、他企業との共創を通じて、日本全体の地域活性化を実現させていけるよう最善を尽くしていきたいと思います。
※本記事の内容は、2024年8月26日時点のものです。
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