神田 柚紀Yuzuki Kanda
株式会社インテック ビジネスイノベーション事業本部 ビジネスイノベーション部 主事
2018年、新卒で株式会社インテックに入社。先端技術研究所の画像処理・AIの研究チームに配属。プログラミング未経験でのスタートだったが、基礎から学びながら画像処理や深層学習に取り組む。2019年以降は、インテックが協賛するトランポリン日本代表の演技解析プロジェクトに参画。姿勢推定AI(※1)を活用した演技解析システムの開発に携わり、検証用デモシステムの構築までを担当。2024年4月からは、事業化に向けた検証フェーズに移行するため、ビジネスイノベーション部へ異動。現在はトランポリン演技解析システムを中心に、さまざまな分野への応用可能性を探っている。
2018年、新卒で株式会社インテックに入社。先端技術研究所の画像処理・AIの研究チームに配属。プログラミング未経験でのスタートだったが、基礎から学びながら画像処理や深層学習に取り組む。2019年以降は、インテックが協賛するトランポリン日本代表の演技解析プロジェクトに参画。姿勢推定AI(※1)を活用した演技解析システムの開発に携わり、検証用デモシステムの構築までを担当。2024年4月からは、事業化に向けた検証フェーズに移行するため、ビジネスイノベーション部へ異動。現在はトランポリン演技解析システムを中心に、さまざまな分野への応用可能性を探っている。


※1 姿勢推定AI:画像や動画に映った人の姿勢情報を取得するためのAI技術。一般的なビデオカメラ1台で撮影した映像から、人の骨格を手軽に認識できる。
「動作解析やAIを、特別な技術ではなく、日常のコミュニケーションの中で使えるものにしたい」と願うのは、株式会社インテック ビジネスイノベーション事業本部 ビジネスイノベーション部の神田 柚紀。
姿勢推定AIを活用したトランポリン演技解析を起点に、現場のルーチンに自然に溶け込む技術のあり方を追求してきました。スポーツ分野にとどまらず、産業や公共といったさまざまな領域へと応用の可能性を広げながら、技術と人を繋ぐ役割を担っています。本記事では、神田が歩んできた取り組みの軌跡と、その根底にある想い、そして描くビジョンに迫ります。
動作解析を「日常で使える技術」にする挑戦
現在取り組んでいるお仕事の中で、ご自身が叶えたいと思っている願いは何でしょうか?
私が叶えたいのは、動作解析やAIといった技術を、特別な場面だけでなく、手軽かつ日常的に使えるようにすることです。
スポーツに限らず、人の動作が関わる指導や技術継承の現場では、今もなお指導者の経験や主観的な感覚に頼る場面が少なくありません。一方で、人材不足や技術の高度化が進む中、動作情報をデータとして捉え、共有・可視化することは、さまざまな分野で重要な課題になっています。
高価な専用センサーや特殊なカメラを使えば、精緻な動作解析は可能です。しかし、その方法では利用できる環境が限られ、研究や一部の専門的な現場にとどまってしまいます。
私が目指しているのは、スマートフォンで撮影した動画を使うなど、より身近な手段で動作解析ができる環境を整えることです。動作解析やAIが、日常の指導やコミュニケーションの中に自然に溶け込み、当たり前に使われる世界を実現したいと考えています。

その願いを抱いたきっかけや背景があれば教えていただけますか?
きっかけの一つは、あるデータ解析のシンポジウムで聞いた「なぜ、ものさしが存在するのか」という話でした。
「大きい」「小さい」といった感覚的な表現は、人によって受け取り方が異なります。単位や計測装置があるからこそ、物事を正確に共有し、同じ認識で話すことができる。その話を聞いたとき、数字やデータは単なる情報ではなく、人と人を繋ぐためのコミュニケーションツールなのだと気づかされました。
この気づきを通じて、動作解析も、ただ数字を示せばよいのではなく、日常的なコミュニケーションの中で自然に使えることが大切なのだと認識を改めました。「特別な解析を、特別なときに行うのではなく、日常の延長線上で無理なく使える技術にしたい」。そう考えるようになり、この考え方は、現在の業務においても「どれだけ精密か」という視点を大切にしながら、その精密さを現場で使い続けられる形に落とし込めているかを判断軸にする姿勢に繋がっています。
現場起点で考える、姿勢推定AIの実装
ご自身が叶えたいと考えている願いに対して、どのような形で取り組まれていますか?
現在は、姿勢推定AIを活用したトランポリン演技解析システムの企画・開発を中心に取り組んでいます。
プロジェクトに参加した当初、私はトランポリン競技を実際に経験したことも、見たこともありませんでした。そこでまず、競技への理解を深めるために、練習場や大会にはできるだけ足を運び、選手やコーチの方々がどのような練習を行い、どのようなコミュニケーションを取っているのかを知ることから始めました。
私たちの目的は、動作解析の技術を導入すること自体ではなく、日々の指導や練習の中で、自然に活用してもらうことです。そのためには、普段のルーチンの中に、違和感なく姿勢推定AIを組み込めるような工夫が欠かせません。
トランポリンのプロジェクトに限らず、他の案件でも現場の流れを大きく変えることなく使ってもらえるよう、技術の選定や設計を行っています。

それらの取り組みの中で、困難に感じる部分はありますか?
最も難しかったのは、現場で使える手軽さを保ったまま、十分な認識精度を確保することでした。
姿勢推定AIは、ユーザーが手軽に使える一方で、認識精度をどう確保するかが大きな課題でした。日常的な動きであれば、訓練済みのOSSモデルでも一定の精度が得られます。しかし、トランポリンのように動きが速く、独特な姿勢が頻繁に現れる競技では、そのままでは十分な精度が出ないケースがありました。
そこで、目的に適したAIモデルを選定し、必要に応じて新たにデータを作成して再学習を行うなど、地道な作業を重ねながら精度改善に取り組んできました。数千枚単位でデータを用意し、検証と調整を繰り返すことも多くありました。
AIモデルの開発というと華やかな印象を持たれがちですが、実際にはこうした地道な作業の積み重ねが欠かせません。
また、精度向上の前提となるデータ収集そのものにも、さまざまな難しさがあります。例えば、姿勢推定AIを活用した手話翻訳の取り組みでは、まず数名の方にご協力いただいてデータを収集しましたが、それぞれに手話表現の癖があり、そうしたぶれを吸収するためには多くのデータが必要でした。さらに、将来的には誰がやっても高い精度で翻訳ができるようにしなければならないので、更に膨大な量のデータが必要になることが予想されます。そこで、データをより簡単に取得し、モデルを成長させるサイクルを実現できないか挑戦をしているところです。
AIの学習には「正解となる答え」が不可欠です。手話の場合、どの動きがどの意味に対応しているのかを正しく付与する必要があるため、手話の知識を持つ方の協力も欠かせませんでした。さらに、制服のロゴや個人情報でもある顔など本来学習させたくない情報までAIが拾ってしまうのではないかという懸念があり、どの情報を学習に含めるかについても工夫が必要でした。
こうした課題に向き合いながら、現場で使ってもらうことと、技術を育てていくことを同時に進める必要があり、日々、試行錯誤を重ねています。
ご自身の職務を果たす上で、どういった部分にやりがいを感じますか?
姿勢推定AIの精度改善に取り組んできた期間を経て、初めて現場でシステムを動かせたときは、とても嬉しかったことを覚えています。現場で実際に解析を行い、結果を共有できたことで、競技者やコーチの方から「こんなことはできないか」「こういう使い方はどうか」といった声が上がり、自然と意見交換や議論が生まれるようになりました。
そのやり取りを通じて、この技術に期待してもらえているのだと実感しました。現場の声を聞きながら、一緒に試し、考え、形をつくっていけることが、この仕事の大きなやりがいです。

スポーツから、社会へ――広がる動作解析の可能性
今後、どのような領域、どのような関わり方で社会課題解決に貢献していきたいとお考えですか?
すでにスポーツ分野では、映像解析や運動データを活用した指導が広く行われており、動作解析の活用という点では、最も進んでいる分野の一つではないかと感じています。一方で、人の動きをデータとして捉えて共有するという考え方は、スポーツに限らず、産業分野や公共分野など、さまざまな領域でも求められているのではないかと考えるようになりました。
実際に、トランポリン演技解析や手話翻訳の取り組みをきっかけに、製造業の現場や、牛や馬といった家畜の動作解析など、スポーツ以外の業界から声をかけていただく機会も増えてきました。こうした広がりを通じて、これまでに培ってきた知見やノウハウがさまざまな現場で活かされつつあり、今取り組んでいる研究や開発の価値をあらためて実感しています。
今後もさまざまな技術にアンテナを張りながら、最新技術をどのように活用すれば社会に役立てられるのかを考え続けていきたいと思います。技術そのものを目的にするのではなく、まず人や現場を理解することを大切にしながら、技術と人を繋ぐ役割を果たすことで、社会に貢献していきたいと考えています。
※本記事の内容は、2025年12月29日時点のものです。

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