TIS INTEC Group MAGAZINE

叶える人#07

「次世代につながる、量子コンピュータとの出会い」を叶える。

高宮 安仁Yasuhito Takamiya
TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 戦略技術センター テクニカルエキスパート
大学院を修了し、東京工業大学で学位を取得後、2006年にNECへ入社。高速計算や分散処理の研究開発職を経て、ネットワーク分野の研究開発に携わる。ネットワーク機器を柔軟に制御できるソフトウェア「Trema(トレマ)(※1)」の開発を主導。オープンソースとして公開したことで、世界中のエンジニアや研究者に利用されるプロジェクトへと成長させた。2018年にTISへ転職。現在は量子コンピュータ分野を中心に、「誰もが学び、触れられる環境づくり」を目指し、ソフトウェアや学習ツールの開発に取り組んでいる。
※1 Trema(トレマ):ネットワーク全体の動きをまとめて管理・制御するソフトウェアを、効率よく開発するための土台となる仕組み。
「誰もが量子コンピュータに気軽に触れ、学べる環境をつくりたい」と願うのは、TIS株式会社 テクノロジー&イノベーション本部 戦略技術センターでテクニカルエキスパートとして活躍している高宮 安仁。
量子コンピュータのソフトウェアや学習ツールを開発・無償公開することで、未来の研究者やエンジニアが育つ環境づくりに挑んでいます。本記事では、量子コンピュータの間口を広げるために高宮が取り組んでいる活動と想いを掘り下げます。

量子コンピュータをもっと身近なものに

現在取り組んでいるお仕事の中で、ご自身が叶えたいと思っている願いは何でしょうか?
私が叶えたいのは、量子コンピュータ(※2)を一部の専門家だけの技術にせず、興味を持った人が誰でも学び始められる環境をつくることです。「量子コンピュータを学びたい」「使ってみたい」と思った人にとって、できるだけ敷居の低い環境を整えたいと考えています。
量子コンピュータは、原理や扱い方が難しく、現時点では高度な専門知識がなければ触れること自体が困難な技術です。実際に、専門家以外の人が学んだり、触れたりできる機会は限られています。
一方で、実用化に時間はかかりますが、将来的には創薬や物流の最適化、金融分野でのリスク計算など、従来のコンピュータでは解くことが難しかった問題を解決できる可能性がある技術として、大きな期待が寄せられています。
だからこそ将来に備えて、今の段階から誰もが学び始められる環境を整えておくことが重要だと考えています。
自分がつくったソフトウェアを無償で公開し、それが誰かの学びや研究の助けになれば嬉しいです。そうした積み重ねが、将来の研究者やエンジニアを育てることに繋がり、それが自分なりの社会への貢献だと思っています。
※2 量子コンピュータ:量子力学の原理に従って動作する量子ビットを情報の最小単位として計算を行うコンピュータ。従来のコンピュータにはない量子重ね合わせや量子もつれを利用することで、分子中の電子状態などの量子的な振る舞いを効率的にシミュレーションすることや機械学習、素因数分解など、さまざまな問題を高速で解けると期待されている。
その願いを抱いたきっかけや背景があれば教えていただけますか?
背景にあるのは、前職時代に開発したソフトウェア「Trema(トレマ)」に関する経験です。Tremaをオープンソースとして無償で公開したところ、世界中のエンジニアから反響がありました。例えば、スタンフォード大学の講義室で最前線の研究者を相手にチュートリアルを行ったときや、海外の学会で大勢の参加者に向けて半日間のチュートリアルを担当したときには、自分のソフトウェアが海を越えて届いていることを強く実感しました。
「自分が書いたプログラムが、顔も知らない誰かの役に立っている」。その喜びは、何ものにも代えがたいものでした。
この経験から、「自分にはオープンソースの開発を通じて社会に貢献するスタイルが合っているのかもしれない」と感じるようになりました。

難しい技術を、直感的に体験できる形へ

ご自身が叶えたいと考えている願いに対して、どのような形で取り組まれていますか?
現在は、量子コンピュータに関連するソフトウェアや学習ツールの開発に取り組んでいます。代表的なものが、Webブラウザ上で量子プログラムを体験できる「Qni(キューニ)(※3)」です。専門的なコードを書く必要はなく、マウス操作で量子回路(※4)を組み立てられるように設計しています。
ほかにも、量子コンピュータの原理を学べるゲーム「QA²(キューエーツー)(※5)」や、研究者向けに量子プログラムを最適化する「Tranqu(トランク)(※6)」などを開発してきました。これらはすべて無償で公開しています。
2025年4月からは、最新の科学技術を学べる日本科学未来館の常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」にQniが採用されました。DJ体験を通して、量子コンピュータのプログラミングを、ブロックを並べるだけで理解できる展示です。オープン以来、国内外から多くの来場者が楽しんでくれています。
※3 Qni(キューニ):Webブラウザ上で動作する、量子回路の編集とシミュレーションができるWebサービス。画面上で量子回路を編集すると、その内容がリアルタイムでシミュレーションに反映される。産業技術総合研究所との共同研究により開発。
※4 量子回路:量子コンピュータに対する命令を図で表したもの。通常のプログラミングのようにコードを書く代わりに、ブロックを並べて処理の流れをつくる。
※5 QA²(キューエーツー):量子コンピュータの理論に基づいてブロックを入れ換えて消すアクションパズルゲーム。プレイしながら量子コンピュータの理論を学べる。大阪大学との共同研究により開発。
※6 Tranqu(トランク):量子プログラムを量子コンピュータ(実機)で実行できるように変換・最適化するためのソフトウェア。ユーザーが処理方法を選択できる点が特長。大阪大学との共同研究により開発。
それらの取り組みの中で、困難に感じる部分はありますか?
一番難しいのは、「難しいものを簡単に見せる」ことです。量子コンピュータの原理は、大学院レベルの知識が前提になることも多く、数式や数値をそのまま並べても、初学者には何が起きているのか伝わりません。
そのため、Qniの開発では、計算結果をどう視覚化するかに特に苦心しました。そこで、量子の状態を円の大きさや向きで表し、直感的に把握できるよう工夫しています。ただし、量子ビットの数が増えると表示すべき円の数も膨大になります。その中でも操作に対して瞬時に反応する、滑らかな表示を実現するため、技術面での工夫も重ねてきました。
日本科学未来館の常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」では、一般の参加者にも直感的に理解してもらえるよう、「確率の大きさ・小ささ」を棒グラフのような形で表し、量子の状態を示しています。
また、DJが音楽を流すような感覚で量子コンピュータを操作できる「ダンスフロア」という展示も用意しました。
「量子コンピュータ・ディスコ」のゾーン2「ダンスフロア」では、来場者の操作に応じて量子回路が変化する仕組みを取り入れています。DJブースのような装置の裏側ではQniが動作しており、その計算結果がリアルタイムで反映されます。専門知識がなくても、量子コンピュータの計算の仕組みをイメージしながら、直感的に理解できる構成です。
「難しさ」という課題を解決するために、日本科学未来館の展示チームとも何度も議論を重ねながら、「専門家でなくても楽しめる体験」を目指して取り組みました。
ご自身の職務を果たす上で、どういった部分にやりがいを感じますか?
やはり、自分のつくったものが実際に使われている場面を見るときですね。日本科学未来館で、来場者の方が楽しそうに展示に触れている様子を見ると、純粋に嬉しくなります。個人的な話ですが、離島に住んでいる両親が展示を見に来てくれたこともありました。そうした瞬間に、「やってきてよかった」と感じます。
実はプライベートではDJとして活動していて、量子学習ゲームQA²のBGMも自分で制作しました。仕事と趣味が思わぬ形で結びついたことも、印象に残っています。

興味の入り口と「学びたい」という気持ちを、未来に繋ぐ

今後、どのような領域、どのような関わり方で社会課題解決に貢献していきたいとお考えですか?
これからも、「使いやすいツールをつくり、誰もが手軽に使える形で公開する」というスタイルで取り組み続けていきたいと考えています。一人でできることは限られていても、ソフトウェアを無償で公開すれば、その影響は多くの人に広がっていきます。
研究活動には、学会への参加や大学との共同研究、成果のオープンソース公開など幅広い活動が欠かせません。TIS は、そうした研究の進め方や挑戦そのものを認めてくれる会社です。すぐに事業化に繋がらなくても、試行錯誤を重ねながら取り組みを続けられる。その環境があるからこそ、Qni やQA²といった取り組みを継続できています。今後もQniやQA²、Tranquを継続的に改良しながら、新しいニーズに応えるツールも生み出していくつもりです。
また、日本科学未来館の展示やゲームのように、量子コンピュータへの興味の入口をつくる活動にも関わり続けたいです。今、QA²で遊んでいる子どもが、将来大学で量子コンピュータを学んだときに「この記号、見たことがある」と感じるかもしれない。そんな小さな気づきのきっかけを、少しでも増やしていくことが自分の役割だと考えています。
多くの人に量子コンピュータをもっと身近に感じてもらえるよう、これからも「学びたい」という気持ちに応えられる仕組みづくりを続けていきます。
※本記事の内容は、2025年12月23日時点のものです。

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