TNFDに基づく情報開示
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)は、世界の金融の流れを自然にとってマイナスの結果からプラスの結果へとシフトさせることを最終目標とし、民間企業や金融機関が自然資本及び生物多様性に関するリスク機会を評価、開示するための枠組みを構築するイニシアチブです。
TNFDでは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの基礎項目における情報開示が求められています。
ガバナンス
当社のサステナビリティ経営体制は、コーポレートサステナビリティ委員会を通して、潮流を捉え、サステナビリティに関する課題を議論し、注力すべき課題の選定と対応の方向性が取締役会にて示されます。この課題設定と方向性は、経営会議等を通じて執行側に示され、執行側にてその企画や計画を経営会議で審議した後、取締役会を通じて策定されます。またその執行も、取締役会を通じてモニタリング、監督されます。
コーポレートサステナビリティ委員会は、コーポレートサステナビリティの最高責任者(議長)、取締役、監査役、コーポレートサステナビリティ推進責任者、企画本部長、企画部長により構成されます。
自然資本及び生物多様性に関する方針は、サステナビリティに関する課題の一つとして、コーポレートサステナビリティ経営体制の下で検討されています。
また、グループ環境課題全体に対する取り組みの一元化を図り、自然資本及び生物多様性の施策と気候変動対策は同一のガバナンスで推進しています。
戦略
①自然関連に対する分析(TNFDシナリオ分析)
TISインテックグループは、TNFD開示フレームワークで示されているLEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)アプローチに沿って、当社グループと自然資本・生物多様性との関わり(どのような依存・影響関係にあるか)を分析しています。
LocateおよびEvaluateのプロセスでは、当社グループの直接操業にあたるデータセンター及びオフィスの事業活動を対象として自然との接点と依存・インパクトを分析しました。分析にはWWF(※1)の生物多様性リスクフィルター(BRF(※2))を使用し、当社グループの事業活動における生態系への依存と自然へのインパクトの洗い出しおよび、評価を行いました。
Assessのプロセスでは、LocateおよびEvaluateの検討を踏まえ、将来的に当社グループにどのような影響が生じるか、関係組織を含めたディスカッションを行い、リスクを検討しました。その際データセンターの立地やファシリティ要件については、各行政機関が公表している「地域別ハザードマップ」や「データセンターファシリティ・スタンダード」のティア基準に照らして評価しました。
(※1) WWF(World Wildlife Fund):世界自然保護基金。世界最大規模の自然環境保護団体である国際NGO
(※2) BRF(Biodiversity Risk Filter):自然資本・生物多様性関連のリスクのスクリーニング(選別)を行うツール
②自然関連の相関図
上記①の自然関連に対する分析をもとに、TISインテックグループの主な事業と自然との接点を把握し、下図のとおり相関性を可視化しました。
尚、気候変動に関する項目(「大気」および、「地すべり/火災/猛暑/熱帯低気圧」)については、「TCFDに基づく情報開示」にて財務影響を開示しています。

③自然関連のリスクと財務影響
上記②で示したTISインテックグループと自然資本との相関関係から、当社の自然関連リスクを特定し、2031年3月期の財務影響を評価しました。

(注1)リスクが顕在化した場合に想定される対策費用または被害額が財務に及ぼす年間最大影響額
軽微:~10百万円未満 小:10~100百万円未満 中:100~1,000百万円未満 大:1,000~10,000百万円未満 甚大:10,000百万円~
分析した結果、特定した全6つのリスクのうち、5つのリスクの影響度は「軽微」、または「小」であり、当社グループと自然資本との関連性が比較的低いことがわかりました。
一方で、リスクの影響度が「中」のリスクとして、「データセンターにおけるA重油等の漏洩や廃棄物などにより、自然に影響を与える可能性が有ること」が確認できました。
このリスクに対する軽減策として、下記表に記載した対策を講じており、この対策を継続しつつ、リスクの変化をモニタリングしてまいります。
リスク管理
リスク管理プロセスについて、効率的なリスク分析・検討等の実現を目的として、原則として気候変動対応と同様のサイクルとすることで、環境課題全体に対する取り組みの一元化を図ります。
自然資本・生物多様性との相関関係があるデータセンター事業においては、その事業影響額を算定するにあたり、まずは主管組織にて、2031年3月期時点の事業規模シミュレーションを実施し、その情報をもとに、それぞれのリスク項目に対する財務影響額について「TIS省エネルギー推進会議」内で審議していきます。
リスク項目およびその財務影響額について定期的な見直しを行うことで、継続的なリスク管理を図ってまいります。
指標と目標
上表の「自然関連のリスクと財務影響」に記載している影響度「甚大」・「大」リスクに対しては、指標と目標の設定を行い、管理していく方針ですが、現時点において該当するリスクは有りません。よって、自然関連で重要となるターゲットや目標は設定せず、必要に応じて検討していきます。
一方で、影響度「中」のリスクについては、前述の対策表のとおり、現行の対策を継続しつつ、リスクの変化をモニタリングしてまいります。
また影響度「小」・「軽微」はリスク顕在化の可能性は低いものと捉えていますが、リスクの変化については今後もモニタリング実施の有無も含め、継続して検討していきます。