TCFDに基づく情報開示
TISインテックグループは、地球環境問題の中でも、とりわけ重要度が増している気候変動への対応について、重要な経営課題の一つに位置付けています。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、金融安定理事会(FSB)により設置されたタスクフォースで、気候変動がもたらすリスク及び機会について、企業が把握、開示することを推奨する提言を、2017年6月に発表しました。
TCFDでは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの基礎項目における情報開示が求められています。
ガバナンス
当社のサステナビリティ経営体制は、コーポレートサステナビリティ委員会を通して、潮流を捉え、サステナビリティに関する課題を議論し、注力すべき課題の選定と対応の方向性が取締役会にて示されます。この課題設定と方向性は、経営会議等を通じて執行側に示され、執行側にてその企画や計画を経営会議で審議した後、取締役会を通じて策定されます。またその執行も、取締役会を通じてモニタリング、監督されます。
コーポレートサステナビリティ委員会は、コーポレートサステナビリティの最高責任者(議長)、取締役、監査役、コーポレートサステナビリティ推進責任者、企画本部長、企画部長により構成されます。
気候変動に関する方針は、サステナビリティに関する課題の一つとして、コーポレートサステナビリティ経営体制の下で検討されています。

戦略
TISインテックグループは、気候変動対応における当社グループのレジリエンスの検証に向け、以下①~③を実施しています。
①シナリオ分析:気候変動に関するRCP(代表濃度経路)等の科学的根拠等に基づき1.5℃シナリオと4℃シナリオを用いて各々の世界観を想定し、リスク要因を整理
②相関関係の可視化:上記①で実施したシナリオ分析をもとに、TISインテックグループの主な事業と気候変動におけるリスクおよび機会について、関係性を可視化
③リスクと機会の具体化:上記②を踏まえ、リスクおよび機会を具体化するとともに、当社グループの事業に関わるリスクについては、現在(2025年3月末)までのリスク低減策を反映した、2031年3月期における財務影響額を再評価。そのうえでリスク低減策を講じなかった場合の財務影響額と比較し、効果を検証
①シナリオ分析 ~1.5℃/4℃の世界観の想定~
TISインテックグループは、気候変動に関するRCP(代表濃度経路)とSSP(共有社会経済経路)および、IEA NZE2050(2050年ネットゼロ排出)の科学的根拠等に基づき、1.5℃シナリオと4℃シナリオを用いて各々の世界観を想定し、当社グループの事業に関連するリスクおよび機会の要因を整理しました。
【表1】 科学的根拠等に基づいた、1.5℃シナリオと4℃シナリオを用いた各々の世界観の想定および、リスク/機会の要因整理

②気候変動における相関図
上記①のシナリオ分析をもとに、TISインテックグループの主な事業と気候変動におけるリスクおよび機会について、下記【図1】のとおり相関性を可視化しました。

③-1 リスクと財務影響
上記①、②で整理した内容をもとに、TISインテックグループの事業全体におけるリスクを具体化しました。
リスクは2021年に組織横断的に開催した「気候変動対応検討会」で評価し、その後2024年に、リスク低減策実施後の財務影響を再評価しました。
主なリスク低減策として、現在(2025年3月末)までに、再生可能エネルギー導入推進(62.7%導入見込み)、グループ全体での情報開示、第三者評価のスコアアップに努めてまいりました。
その結果、リスク低減策を講じないケースと比較して、リスク低減策実施後の財務影響額が大幅に低減(リスク低減)されることが確認できました。
下記【表2】は、現在のリスク低減策と同レベルの対策を継続し、それ以上の追加の対策を行わなかった場合に想定される、2031年3月期の財務影響額を示しています。
今後も引き続き、再エネ導入等の気候変動対策を推進していくことで、更なるリスク低減を図ってまいります。
【表2】 特定したリスク、および2031年3月期における財務影響(リスク対応策実施後)

③-2 機会
上記①、②で整理した内容をもとに、機会を具体化しています。
機会についても2021年に組織横断的に開催した「気候変動対応検討会」で整理しています。
今後も当社グループが貢献すべき社会課題として掲げている「低・脱炭素化」に向け、社会課題解決型サービス事業の拡大を目指して参ります。
【表3】 特定した機会

④ 戦略のレジリエンス
上記①のシナリオ分析結果(1.5℃/4℃)に対して、上記③-1で特定されたリスクの財務影響額をもとに、当社グループが気候変動に対して事業を継続していく上でのレジリエンス(強靭さ)について説明します。
4℃シナリオへ移行した場合、「気温上昇に伴う自然災害発生リスク」が高まりますが、当社グループにおける財務影響は小さく、現在のビジネスモデルを変更することなく、事業を継続できること(レジリエンスがあること)が判りました。
一方で、1.5℃シナリオへ移行した場合は、「気候変動対策が遅れることによる社会的信頼低下や顧客離れが進むリスク」が想定され、財務影響額も大きいため、リスク低減策を講じる必要があることが判ります。尚、リスク低減策は、後述する「指標と目標」に則り、対策を講じていくことによる効果を検証する必要があります。
リスク低減策の効果の検証については、以下3点を算出/分析した結果、リスク対策前後の財務影響額の差異(c. - a.)が、b. リスク低減策実施に伴う費用と比べて大幅に大きく、つまりリスク低減策を講じることで、財務影響額(リスク)を大幅に低減できることを確認できました。
a. リスク低減策を講じなかった場合の財務影響額
b. リスク低減策実施に伴う費用
c. リスク低減策を講じた場合の財務影響額
上記の結果を踏まえ、特定されたリスクに対する低減策を継続して実施していくことで、当社グループへの財務影響額(リスク)を低減し、またそれがレジリエンスを高めることに繋がると考えます。
当社グループは、低・脱炭素化の実現に向け、カーボンニュートラル達成にむけた目標を掲げ、更に具体的な移行計画として、「SCOPE1,2における温室効果ガス削減目標と実績推移」(トランジションプラン)を策定し、着実な計画達成を目指してまいります。
さらに事業を通じた低・脱炭素社会への移行を目指すことで、レジリエンスを高めるとともに、社会全体のサステナビリティ実現に大きく貢献して参ります。
SCOPE1,2における温室効果ガス削減目標と実績推移(トランジションプラン)
リスク管理
当社グループの事業において、特に気候変動問題との関わりが深いデータセンター事業においては、その事業影響額を算定するにあたり、まずは主管組織にて、2031年3月期時点の事業規模シミュレーションを実施し、その情報をもとに、それぞれのリスク項目に対する財務影響額について「TIS省エネルギー推進会議」内で審議していきます。
リスク項目およびその財務影響額について定期的な見直しを行うことで、継続的なリスク管理を図ってまいります。

指標と目標
2021年に開催した「気候変動対応検討会」では、リスクの特性毎に、「温室効果ガス(GHG)削減結果により低減できるリスク」、「GHG削減の方法に関するリスク」、「気候変動の物理的影響に伴うリスク」の3つに分類、整理しました。そのうえで各分類毎に「指標と目標」について検討しました。
検討にあたっては、SSBJが公表する「サステナビリティ開示テーマ別基準」-「気候関連開示基準」および、ISSB が公表する「産業別ガイダンス」(ソフトウェア及びITサービス(TC-SI))を参照し、その適用可能性についても考慮しています。
指標
当社グループでは、気候関連のリスクを評価する際に、GHG排出量の削減率、再生可能エネルギー利用率を指標として用いています。

目標
上記に掲げた2つの指標である「GHG排出量の削減率」および、「再生可能エネルギー利用率」に対して、以下目標を掲げています。
◇短期目標 | GHG排出量(Scope1+2) [2020年3月期比] 70%削減 対象:グループ連結 |
◇中期目標 | 再生可能エネルギー利用率(オフィス・データセンター)2031年3月期 100%導入 対象:国内グループ連結 |
◇長期目標 | カーボンニュートラル宣言の実現 対象:グループ連結 |