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財務担当役員メッセージ

財務方針/資本政策に関する基本的な方針

 当社グループは、財務方針/資本政策の基本的な方針を「持続的な企業価値の向上に向けて、中長期の経営視点から、成長投資の推進・財務健全性の確保・株主還元の強化のバランスのもと、資本構成の適正化を推進すること」と定めています。具体的には、①持続的な事業利益の成長・収益性向上によるキャッシュ創出力の強化を図るため、積極的に成長投資を推進し、この一環として事業ポートフォリオの見直しも継続的に検討・実施します。また、②バランスシートマネジメントの強化等を通じて当社グループの構造転換の進化に応じた資本構成の適正化を推進することにより、財務健全性を確保した上で資本コストを上回るリターンを持続的に創出します。③株主還元については事業成長に応じた充実化を図ることとしています。
 この方針に沿った施策を推進してきたことで、持続的な事業成長を果たした上で株主還元を充実化させるとともに、資本効率性も高めてきました。これからも企業価値のさらなる向上を目指し、この方針に沿ってしっかりと施策を推進していきたいと考えています。
 以下では、「キャッシュアロケーション」「バランスシートマネジメント」「成長投資」「株主還元」「ROE・ROIC、EPS」に分けて、これまでとこれからの考え方や取り組み等についてご説明してまいります。

キャッシュアロケーション

 前述した財務方針/資本政策の基本方針に沿って、キャッシュアロケーションは企業価値向上に資する施策に対して優先的に行っています。キャッシュ創出力を高めるための成長投資へ積極投下をし、事業成長により得たキャッシュをさらなる成長に向けて投資を継続強化する善循環を図ります。これと同時に株主還元強化とのバランスを取りながら、資本効率性を高めるべくバランスシートマネジメントにも目配せをし、最適資本構成を追求した配分を行っています。
 前中期経営計画においては、これまで行ってきた成長投資のリターン等による事業成長および構造転換の進展に伴うキャッシュ創出力の高まりや、事業ポートフォリオの見直しに伴う子会社売却および政策保有株式の縮減等もあり、キャッシュインが想定を上回りました。それを受けて事業と人材への成長投資およびM&Aの実行、株主還元の強化に加え、資本構成適正化を目的とした自己株式取得等の財務施策を積極的かつ機動的に実施しました。詳細は後述しますが、結果として2024年3月期のROEは16.0%、EPSは3カ年でCAGR22.5%を実現しています。
 新中期経営計画においては、引き続き事業成長および構造転換を進展させることでキャッシュ創出力をさらに高めるとともに、資産適正化や投資機会に応じた資金調達も実施することで、約2,400億円のキャッシュインを想定しています。一方、キャッシュアウトについては、約650億円の設備投資に加えて約1,000億円の成長投資をするとともに、株主還元としての配当および自己株式取得を約750億円と想定しています。
 なお、設備投資には、持たざる経営における例外対応として、2023年3月に決定したシステム運用業務および自社ブランドのクラウドサービス提供の中核拠点である施設の不動産信託受益権の分散取得分、約420億円を含んでいます。これら基本的な枠組みを持ちつつも、事業環境の変化やさらなる成長への投資機会等があった場合には、柔軟な組み換えをしアロケーションを最適化することによる企業価値向上も常に意識してまいります。

バランスシートマネジメント

 中長期視点での資本で構成されたバランスシート、このマネジメントを高度化することが持続的なキャッシュ創出力向上の礎となり、資本コストを上回るリターンを持続的に創出する、つまりは価値創造をもたらす資本政策の一つだと考えています。これは短期的な損益マネジメントだけでは決して実現させることはできません。
 前中期経営計画において、資産の面では、構造転換推進のための積極的な投資に伴うソフトウェア資産の増加(ソフトウェア勘定は3年間で約50億円増の200億円強)や、特に日本ICSのM&Aに伴う関連資産の増加で事業資産が大きく増加しました。一方で非事業資産については、特に政策保有株式の縮減を強力に推進し、2024年3月期の貸借対照表計上額は267億円と2021年3月期から約193億円減少させ、連結純資産に対する比率は、2023年3月期末時点で目標としていた10%水準への引き下げの早期実現を達成しました。資本の面では、経営の質が転換してきており、今後もそれがさらに進んでいくことへの手応えが強まったこと等を踏まえ、財務健全性へ目配せをした上で、資本構成の適正化を図る観点から2023年3月期および2024年3月期に合計約470億円の大規模な自己株式の取得を実施しました。なお、取得した自己株式については、原則として発行済株式総数の5%を超過する保有分については消却する当社方針に沿って、全て消却しました。こうした結果、2024年3月期における自己資本比率は、前期比4.7ポイント低下の59.5%となりました

 新中期経営計画においても、引き続き資本効率性重視の上で積極的な成長投資や事業構造転換と事業のスケール化を実現するための知財の蓄積等により事業資産を強化していく考えです。現預金水準については、コミットメントラインと合わせて月商2カ月程度の保有という規律を設け、金融資産を中心とした非事業資産については過度に溜め過ぎることなく、資本コストを意識した低減を推進してまいります。また、格付はA格の維持をはじめ財務健全性の確保を前提に、M&Aや前述の施設関連資産の増加に対応した有利子負債の活用も視野に入れ、D/Eレシオも0.5倍までを許容することとしています。持続的な利益成長に伴って積み上がりが見込まれる資本に対しては、溜め込むことをせず、企業価値を向上させるための投資へ機動的な配分を実施していく所存です。

成長投資

 前中期経営計画においては、成長投資約1,000億円の想定に対して、研究開発や教育・育成を中心とした人材への投資、サービス型事業を推進するためのソフトウェア投資は概ね計画に沿って実施しました。日本ICSに代表されるM&Aおよび出資に関しては投資判断に外的要因も大きく、機会やタイミングを見定めた結果、約340億円に留まりましたが、投資配分の見直しを柔軟に行い、その1つとしてまずは最重要の経営資本である人材に対する先行投資としての大幅な処遇改善を約50億円実施しました。これは世の中の給与ベースアップ議論やステークホルダーの皆様からの期待、同業他社での実施に先駆けた成長投資であったと考えています。これに留まらず、資本構成適正化のための財務施策分約470億円に振り向ける等、広く企業価値向上に資する投資を積極的に実施したと認識しています。
 新中期経営計画においても、企業価値向上に資する投資を積極的に実施していくという考えのもと、成長投資としては3年間で約1,000億円を計画しています。内部強化としての人材投資については、社員と会社の価値交換の善循環を促進することを目的に実施してまいります。具体的には、人材戦略でお示しした通り、社員一人ひとりの新たな挑戦を支援することであり、新中期経営計画の基本方針フロンティア開拓を実現していくものです。この投資対効果を測る1つの指標として、新たにPH営業利益の目標を掲げ、投資による成長実現を目指してまいります。

 また先端技術や新規事業創出を加速するための研究開発(R&D)投資、サービスラインナップ拡充や社会課題解決、業界プラットフォーム構築に向けたソフトウェア投資と併せて300億円を内部強化のための投資に、そして出資を含むM&Aについては700億円を想定しています。なお、M&A等は国内外問わず、オファリングサービスや共創事業の拡大、バリューチェーンの拡大等を主目的として推進する想定であり、WACCに基づくハードルレートのみならず、長期目線で全社ROICの水準引き上げに資する投資規律を守りながら鋭意検討・実施してまいります。

株主還元

 あらためて、当社は株主の皆様への利益還元を重要な経営課題と認識しており、事業成長に応じて継続的に充実化させていくためには、一時的な損益に影響されない営業活動から得られた利益をベースとして株主還元を実施することが望ましいと考えています。前中期経営計画においては、総還元性向45%(目安)に沿った株主還元を実施し、このうち、1株当たり配当金については、2024年3月期で12期連続の増配を実現し、かつ、3カ年のいずれも計画を上回る事業成長を果たしたことを踏まえて期初予想を上回る配当とし、株主の皆様とのエンゲージメントを高めることができたと考えています。
 新中期経営計画においても基本的な考え方は変わりありませんが、株主の皆様とのエンゲージメントをさらに高めるべく、1株当たり配当金については継続的な充実化を図るとともに、中間・期末配当金のバランスを均等にする等、さらなる安定化も図ります。自己株式の取得を加えた総還元性向(目安)についても、これまでの45%から50%へと引き上げることで、株主還元のさらなる充実化を実現してまいります。なお、今後も取得する自己株式については原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却する方針は変わりありません

ROE・ROIC、EPS

(1)ROE・ROIC
 前中期経営計画においては、好調に推移した事業活動に加えて状況に応じた財務施策を機動的に実施した結果、ROEは16.0%に向上し、目標とした12.5%~13%を大きく上回ることができました。これには特別利益の計上等が当期純利益率を押し上げた影響も含まれていますが、そうした一過性の要因を除いた場合でも目標水準を上回る14%台であると認識しております。その結果、長期的に目指す姿として掲げた「安定的に15%を実現できる企業への成長」にも近づくことができたと考えています。
 新中期経営計画においては、引き続き資本効率性を意識した経営を推進していく中で、一過性の要因を除いて直近実績を上回る水準を実現するという考えから最低ラインとして16%超を目標とし、長期視点では20%超を目指します。また、「資産(=知財)の価値創出」を重視する観点から、新たな経営指標としてROICを導入することとしました。この3カ年という時間軸では、積極的な成長投資によりやや低下する想定のもと、ROICの目標は13%超としていますが、財務規律を背景として長期的な視点では成長投資の効果創出によって高い水準を実現できると考えています。

(2)EPS
 前中期経営計画においては、CAGR10%の目標に対して22.5%となり、目標を大きく上回りました。事業成長に加えて、事業ポートフォリオの見直しに伴う子会社売却や政策保有株式の縮減等を積極的に推進したことや資本構成適正化のための財務施策を積極的かつ機動的に実施したことが要因です。
 新たな中期経営計画においても、「価値ある成長」を志向する観点から、引き続きCAGR10%を目標としており、事業戦略と対をなす形で財務戦略を推進することで達成を目指します。

さらなる企業価値向上を目指して

 当社グループは、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を確固たる軸として、サステナビリティ経営を推進し、ステークホルダーとの価値交換性の向上を図ることで、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の両立を目指しています。また、資本コストを意識した経営として、人的資本経営への取り組みを含めた積極的な情報開示および建設的な対話を通じ、経営への理解促進・信認確保をすることで資本コストを低減してきたと認識しています。加えて、人材をはじめとする将来に向けた成長投資を積極的に推進する中でも着実な事業成長に伴い、事業利益の拡大および収益性向上を実現する一方で、資本構成適正化に向けた財務施策を推進し、エクイティスプレッドは拡大傾向で推移しています。このような経営の結果を出すことにより、市場評価は大きく向上する等、株主の皆様のご期待に沿うことができているのではないかと考えています。
 これまで実行してきた成果を土台に、さらなる企業価値の向上を追求し、将来への期待溢れる企業となることで引き続き市場と株主の皆様に選ばれ続けられるよう努めてまいります。引き続き規律ある経営のもと、積極的な資本政策を出動させることで企業価値向上を実現していく考えです。積極的な成長投資と収益性向上の両立を図るとともに、株主還元についても事業利益の拡大に応じて継続的に充実させる等、今後も資本コストを意識した経営を推進し、資本コストを上回るリターンの持続的な創出を目指してまいります。また、株主・投資家の皆様とのエンゲージメントの機会を通じて様々なご指摘やご意見等を頂戴することが多く、それは大変貴重なアドバイスであると受け止めると同時に、エンゲージメントで得た気付きを経営に活かし必要な施策を検討・実施してきたと認識しています。いわば、皆様とともに、当社グループは経営を深化させ、企業価値を高めてきたと言うことができるかと思いますし、さらなる経営の深化や企業価値の向上のために引き続きステークホルダーの皆様との結節点として積極的に対話を重ね、ご期待に沿えるように邁進してまいります。

2024年9月
常務執行役員 企画本部長 河村 正和

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更新日時:2025年7月18日 16時14分