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トップメッセージ(統合報告書版)

企業価値向上への決意
―長期ビジョンの実現に向けた企業価値向上の道筋―

経営環境の認識と変化を力に変える構え

Q.現在の経営環境と今後の展望をどう見ていますか。
 現在の経営環境は、かつてないスピードで変化し、不確実性も極めて高い状況にあります。国内外の経済情勢は金利・為替の変動や、地政学的リスクの高まり、インフレ圧力などにより先行きの見通しが立ちづらい状況が続いています。日本国内でも、労働力不足や物価上昇といった構造的な課題が顕在化しており、企業活動に与える影響はますます大きくなっています。
 IT業界においても、生成AIをはじめとしたテクノロジーの急速な進化、業界再編、企業間競争の激化、人材獲得競争の深刻化など、これまで以上に大きな転換点を迎えていると感じています。これまで以上に企業としての競争力や柔軟な変化対応力が問われる局面にあるといえるでしょう。
 こうした外部環境の変化を“リスク”として捉えるだけでなく、“成長機会”として積極的に向き合っていく姿勢が、今の経営には求められていると考えています。私は常々、どの時代の経営者も“変化とどう向き合うか”という問いに挑み続けてきたと考えており、今の時代が特別に困難なのではなく、変化のスピードと複雑性が増しているのだと受け止めています。その変化に柔軟に対応し、進化し続ける企業でありたいと思っています。
 ITは今や社会インフラとして欠かせない存在であり、社会課題の解決やお客様の競争力強化・業務変革を実現するための重要な手段です。一時的な経済の不透明感があったとしても、IT投資が大幅に減少するとは考えていません。むしろ、付加価値の向上や業務効率化、競争優位性の確立に向けた戦略的な投資は今後も一定の水準で継続すると見ています。これは、多くのお客様企業の経営者の方とお話しさせていただく中で聞かれる声からも実感することであり、当社グループとしては、顧客企業やその先にある社会の変革を支えるパートナーとして、ITの力を最大限に活用しながら価値を提供し続けていく覚悟です。

不確実性を越えて、企業価値向上を実現する

Q.今回、「PBRを起点とした企業価値向上」を明確に打ち出しましたが、そこに込めた思いは。
 中期経営計画(2024-2026)の初年度を終えた今、あらためて実感しているのは、必ずしも「財務目標の達成=企業価値の向上」ではないという現実です。たとえ計画どおりに業績を上げたとしても、企業の将来性や成長の持続性に対する納得感がなければ市場評価は思うように高まりません。実際、株主・投資家の皆様からも「成長の確からしさ」や「将来の収益性」に対して、より明確な説明を求める声がこれまで以上に多く寄せられた1年だったと感じています。
 こうした背景から、当社グループでは企業価値を可視化し、共通認識を持つための指標として、PBR(株価純資産倍率)を重視することとしました。PBRは、企業の純資産だけではなく、無形資産等の「見えない価値」も含めて将来の価値創造力までを考慮した指標であると考えられます。いわば、単なる経営の“成果”ではなく、社会的・将来的な“存在意義”を問われる尺度と言えるでしょう。
 そこで、中期経営計画(2024-2026)の各戦略で描いていた内容について、PBRを構成する要素に沿ったロジックツリーで体系的に分解し、それぞれに対する施策を整理しました。2つの大きな構成要素のうち、ROEについては、1年目の状況と当社としての今後のシミュレーション結果を踏まえ、中期経営計画(2024-2026)の目標の達成に必要と思われる規模の自己株式取得を実施するなど、既に取り組みを進めています。もう一つのPER(株価収益率)については、「成長期待」にどう応えていくかが重要なテーマだと認識しています。
 但し、PBRは複数の因子が複雑に絡み合う指標であり、一つの施策で大きく動くものではありません。だからこそ、「どの因子にどうアプローチしていくか」を明確にすることが、社内外の納得を得るために必要です。
 これまでの取り組みに“構造的な視点”を加えたことで、より一層企業価値に対して本質的に向き合うことができるようになったと感じています。この枠組みのもとで、具体的な取り組みを一つひとつ積み重ね、成果に結びつけることで、中期経営計画(2024-2026)の目標達成、ひいては「グループビジョン2032」の実現へとつなげてまいります。

成長戦略の柱を通じて描く、将来への道筋

Q.PER向上に向けた「成長期待」の訴求についてはどのような考えをお持ちですか。

 PERは、企業の将来収益力に対する市場の期待を映す指標です。しかしながら、当社グループの現在のPERの水準は、主な競合他社やそれをもとにした業界平均と比較すると相対的に低く、「将来にわたって力強い成長を遂げ、それに応じた利益を継続的に創出できる企業である」ことを、市場からもっと認識される必要があると考えています。
 こうした成長期待に応えるため、当社グループでは「IT&ビジネスオファリングサービス(IOS)の収益性向上」「モダナイゼーション」「グローバル事業」の3つを成長戦略の柱に据え、取り組みを着実に進めています。
 まず、IOSについては、「PAYCIERGE」中心としてこれまで立ち上げてきたサービスをお客様ニーズに応じて連携・再構成し、付加価値の高いサービスへと磨き上げていきます。収益性向上と持続的成長を両立し、選ばれるサービスとしての価値強化が狙いです。
 モダナイゼーション領域では、レガシー刷新という短期的なプロジェクトの枠に留まらず、お客様の戦略的パートナーとして信頼関係を構築し、継続的な関係性の中で事業機会を創出していく方針です。プロジェクト終了後の保守や、業務改革支援といった“その先”の提案力を強化することで、安定的な成長ドライバーとしての位置付けを高めていきます。
 最後に、グローバル事業は、現時点では売上規模は限定的ですが、東南アジアを中心に経済成長と技術需要の高まりを背景に将来の収益源としての可能性を広げています。引き続き、現地との信頼関係や事業基盤の整備を進めており、長期視点で将来の飛躍に向けた土台づくりに注力している段階です。
 これらの3つの柱は、当社グループの中長期的な成長ストーリーの中核を担うものです。定量目標だけでなく「どこを目指し、どう実現していくのか」を具体的かつ納得感をもって発信していくことでPER向上につながる市場の信頼を獲得していきます。

中期経営計画初年度の成果と手応え

Q.中期経営計画(2024-2026)初年度の1年間で最も手応えを感じた成果は。
 2025年3月期は、業績面で計画を上回る着地となるとともに、次の成長につながる成果を積み上げることができた1年だったと捉えています。特に、レガシーシステムのモダナイゼーションやSAP ERPの保守終了、自治体のシステム標準化といったテーマを中心として、IT投資需要を確実に取り込むことができました。
 その中でも最も手応えを感じたのは、モダナイゼーション分野における着実な進展です。モダナイゼーションは、当社グループの成長戦略を支える中核的な領域の一つであり、今後の顧客基盤の拡大に直結する重要なテーマです。体制を整え、提案活動を強化したことで、金融系をはじめとする新たな顧客からの受注につながるなど、着実な成果が現れています。
 当社独自の「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」は、短期間に安全かつ確実にモダナイゼーションを実現するサービスとして高い評価をいただいています。COBOLなどのレガシー言語からJavaへの移行に関しては100%近い変換率を誇るだけでなく、変換後の高い保守性を確保し、動作時の性能も考慮したソースコードを自動生成できることが強みです。また、豊富な実績に基づいたプロジェクト運営ノウハウもあります。こうした総合力が評価され、「やはりTISに任せたい」と言っていただける機会が確実に増えています。
 モダナイゼーションは単なるレガシーシステムの刷新に留まらず、お客様のデジタル変革を後押しする重要なきっかけとなります。企業や自治体におけるDX推進が加速する中、当社はモダナイゼーションを起点に、中長期的な信頼関係を築きながら、お客様の戦略的パートナーとしての地位を確立していきたいと考えています。

見えてきた課題と地に足の着いた対応

Q.中期経営計画(2024-2026)の目標達成に向けた課題と、それに対する対処策について教えてください。
 上述のように2025年3月期は、業績面では好調な滑り出しとなった一方で、今後の持続的な成長を見据えると、解決すべき課題が残っています。特に、「不採算案件の抑制」と「IOSの収益性向上」は、企業価値向上に関わる重要なテーマと言えます。
 まず不採算案件については、減少傾向にはあるものの、目標とする年間10億円以内には届いていません。そのため、グループ全体での品質管理体制を強化し、早期検知・早期対処を徹底しています。グループ全体でのモニタリングの強化や運用ルールの徹底、有識者の派遣など、多面的な対策を講じています。しかしながら、不採算案件の多くは、制度や仕組みだけでは防ぎきれず、現場一人ひとりの判断と行動に起因する部分が大きいため、品質管理への理解・浸透・定着が不可欠です。今後も地道な啓発活動と取り組みの徹底を通じて、不採算案件の抑制をぜひとも実現したいと考えています。
 一方、IOSについては、本格的に軌道に乗せるには当初想像していた以上の時間がかかっていることは事実であり、一定の成長はみられるものの、収益性の面でまだ改善の余地があります。これまで当社グループは、多様なニーズに対応すべく積極的な投資を行い、試行錯誤を重ねてきました。その結果、IOSの中核を担うデジタル決済プラットフォーム「PAYCIERGE」では、クレジットカードプロセッシングサービスをはじめとしたサービスメニューの整備が進み、お金の流れを網羅するメニューが整いつつあります。
 今後は、個別に立ち上げてきたサービスを、お客様のニーズに応じて連携させながら、より “尖った”価値を提供できるサービスとして磨き上げていくことで、収益性との両立を図っていきます。また、M&Aを含む投資についても、全体像を俯瞰しながら、シナジー創出につながる必要な領域に集中的に投資をし、IOSの収益性向上を目指していきます。
 こうした課題に向き合い、地に足のついた取り組みを一つひとつ積み重ねることで真の成長軌道へと移行させてまいります。

持続的成長を支える無形資産の強化

Q.中期経営計画(2024-2026)の目標を達成するための、無形資産の強化に対する取り組みを教えてください。
 当社グループが持続的な成長を実現していく上で、もっとも重要な経営資本は「人材」です。人材を中心とした無形資産は、競争優位の源泉であり、成長を支える重要な基盤として継続的な投資を行っています。
 中でも、私が重要だと考えているのは「仲間力」という価値観です。お客様の課題に寄り添い、ともに解決策を見出していく伴走者としての姿勢をこの言葉に込めてきました。グループ内では、セグメントや事業領域を越えた知見の共有や自発的な連携が広がっており、「仲間力」は当社グループらしさを象徴する無形資産として、持続的成長の推進力になると信じています。
 この「仲間力」はグループ内だけでなくお客様との関係にも通じるものです。一体化するお客様をいかに増やしていくか。このお客様の数が増えなければ、当社の成長はありません。ともに課題を乗り越えるパートナーとしての関係性の広がりこそが、企業価値創造の本質であると捉えています。
 こうした文化を基盤に、人材の付加価値をさらに高めるため、「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で人材への投資を強化しています。また、2025年4月からは、企画本部長が人事本部長を兼務し、経営戦略と人材戦略を一体的に推進する体制を整えました。
 もちろん、制度や環境を整えるだけでは人は育ちません。従業員の自律的な挑戦を促すには、経営陣自らが先頭に立ってチャレンジし、やり抜く姿勢を示し続けることが重要です。私は、成長とは、無理な挑戦を強いるものではなく、現実的なストレッチ目標に取り組みながら、少しずつ力をつけていく「加圧トレーニング」のように積み重ねの先に得られるものだと捉えています。従業員一人ひとりが主体的に挑戦し続けられるよう、日々の対話や支援、悩みに寄り添う風土を大切にしていきたいと考えています。
 加えて、生成AIをはじめとする先端技術の活用も重要な取り組みの一つです。2025年4月からは全社的な推進体制を整え、開発現場ではプログラミングやテスト工程での生成AIの活用を加速させています。さらに、生成AIを活用した高付加価値サービスを提供することで、お客様の業務変革を支援する取り組みも広がっています。
 こうした取り組みを中長期的な視点で着実に進め、無形資産を最大限に活かすことで、持続的に成長する企業を目指してまいります。

ステークホルダーとともに描く未来

Q.投資家との対話を通じて感じた期待と、トップとしての覚悟について
 中期経営計画(2024-2026)の発表以降、様々な機会を通じて株主・投資家の皆様と対話を重ねる中で、当社グループに対する期待の高さと、それに伴う視線の厳しさを感じています。とりわけ、「成長戦略の具体性」や「中期経営計画(2024-2026)の目標へのコミットメント」といった点に関するご意見は多く、当社グループの実行力の確かさと長期的な成長力に対する関心の表れであると受け止めています。
 株主・投資家の皆様が本当に知りたいのは、単なる数値目標の達成状況ではなく、当社グループがどういう未来を描き、どこへどのように向かおうとしているのか、そしてその実現性と実行力を問われているのだと感じています。私自身、経営トップとして「コミットメント=約束」をいかに果たすか、その重さを日々あらためて痛感しています。経営者とは、いいことも悪いことも含めて常に考え続けている存在であるべきです。そして、それに対して目に見える形で手を打っているか──この二つが、信頼に足る経営者だと思っています。
 中期経営計画(2024-2026)で掲げた目標達成への道は決して平坦ではありません。しかし、皆様にお約束したコミットメントであり、簡単に達成できるものではないからこそ、もう一段上のステージに行くために挑戦する価値があります。私は、当社グループのポテンシャルを信じ、仲間とともに挑戦し続けることで、確かな成果につながると確信しています。
 私もこれまでのキャリアの中で、多くの変化や困難を経験してきました。たとえ短期的に苦しくとも、中長期的に最善と信じた道を走り抜き、絶対にあきらめないこと。私はリーダーとして常にこれを心掛けています。そして、仲間とともに乗り越えることで、企業も個人も成長できることを実感してきました。
 今後もこうした価値観を大切にしながら、全てのステークホルダーの皆様と誠実に向き合い、企業価値向上という約束を実現してまいります。

2025年9月

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更新日時:2025年10月21日 16時27分