TMI総合法律事務所、TIS、三井住友トラスト基礎研究所が公共施設・インフラにおけるセキュリティトークンに関する共同研究を実施
~アリーナ・地方債などを対象とした住民参加型資金循環モデルの可能性を検証~
2026年5月28日
TMI総合法律事務所
TIS株式会社
株式会社三井住友トラスト基礎研究所
TMI総合法律事務所(以下「TMI」)、TIS株式会社(以下「TIS」)、株式会社三井住友トラスト基礎研究所(以下「SMTRI」)は、公共施設・インフラにおけるセキュリティトークン(以下「ST」)に関する共同研究を実施し、このたび、その初期的な検証結果を公表いたします。
TMI、TIS、SMTRIの3社は、各社の専門性を活かし、公共施設・インフラのST化について、法的・経済的・技術的観点からの課題整理および社会実装に向けた論点の明確化を目的として、「公共施設・インフラのST化に関する共同研究会」(以下「本研究会」)を立ち上げました。
本リリースにて、その第一弾としての検証結果をお知らせするとともに、今後は民間事業者や地域関係者との具体的な実証やテーマの深掘りも進めていく予定です。
共同研究の背景・経緯
近年、廃校や寄付財産などの行政保有不動産の有効活用や、地方経済の新たなけん引役となるスタジアム・アリーナの整備等が全国で進んでいます。一方で、建築費の高騰や老朽インフラの維持管理に係る資金調達は大きな課題の一つとなっています。
PFI(Private Finance Initiative)の推進やスモールコンセッションなど、多様な官民連携スキームが模索される中、近年はデジタルアセットの活用、特にSTの発行による市民参加型ファイナンスへの期待が高まっています。
こうした背景を踏まえ、本研究会は、新たな資金循環モデルの社会実装および地域経済の持続的成長への貢献を目指して設立されました。
主な検証論点
1. アセットの所有主体および権利等の移転可否
- 公共施設・インフラにおいて、どのような資産や権利がSTの対象となり得るか
- STの裏付けとなる権利の移転・譲渡の可否や法制度的制約の整理
2. 経済性やキャッシュフロー特性
- 事業分野ごとのキャッシュフロー特性、事業規模および市場性の整理
- 投資商品としての魅力(リターンやプロジェクトへの共感性等)の検討
3. ST化対象としての親和性・商品設計
- ST化の対象となる資産クラスやスキームの整理
- 対象資産ごとのリスク特性および想定投資家の検討
検証結果概要
本研究会の検証結果概要は以下のとおりです。
1. アセットの所有主体および権利等の移転可否について
アリーナ施設、公立小中学校等の廃校施設、古民家、一般道路、上下水道、太陽光発電施設などの対象施設・事業ごとに、施設等の所有主体およびアセットの移転・譲渡の可否について検証を行いました。
施設等の所有主体が公共である場合、基本的に施設所有権を第三者へ移転することは不可と考えられる一方、サービス対価債権や売電収入債権といった金銭債権については、契約相手方の承諾等を前提に、移転・譲渡が可能と考えられます。
また、運営権については、法制度上は施設管理者等(公共)の許可を得ることで移転可能とされるものの、対象事業の内容や性質に応じた協議が必要と考えられます。
表に挙げたように、アセットに直接紐づく権利等が移転可能な場合には、それらを裏付資産としてST化することができます。一方で、そうした権利等を持たない事業をST化するためには、異なる資産を裏付として検討する必要があります。
出所)本研究会作成
※「公共」は、国、地方公共団体、独立行政法人等の公共法人を指す。
※スモールコンセッションは、法律上明確な定義はないが、国土交通省の資料において、「地方公共団体が所有・取得する身近で小規模な遊休不動産(空き公共施設等。事業規模10億円未満程度)について、民間の創意工夫を最大限に活かした事業運営(コンセッションをはじめとしたPPP/PFI事業)により、官民連携で地域課題の解決やエリア価値向上につなげる取組みの総称」と定義されており、コンセッション方式のほかそれ以外のPPP/PFIの事業手法を広く含む。(https://www.mlit.go.jp/smcn/case/pdf/231114/001709667.pdf)
2. STの経済性やキャッシュフロー特性(投資商品としての適性)
事業分野ごとに、キャッシュフローの安定性や採算性、投資対象としての魅力について整理しました。
アリーナ施設や太陽光発電施設は、一定規模の事業であり、キャッシュフローの予見性も一定程度確保できることから、投資対象としての収益性と地域性・社会性の両立が期待される領域と考えられます。
一方、廃校活用事業は、個別案件ごとの規模が小さく、需要や運営内容により収益が大きく変動するため、投資商品としての収益性は限定的です。しかし、地域参加型・応援型の性格が強く、地域貢献・社会的意義を重視する投資家には一定の魅力があると考えられます。
また、上下水道などの大規模インフラは、収益の安定性が高い一方で、法制度的制約や事業規模の大きさから、ST化の対象とするには慎重な検討が必要であることが示唆されました。
以上より、公共施設・インフラのST化においては、アリーナ施設や太陽光発電施設のような「収益性が比較的安定している機関投資家向きのアセット」と、廃校などの「規模は小さいが地域参加型投資と親和性の高いアセット」とに大きく類型化できる可能性があると考えられます。
出所)本研究会作成
3. ST化対象としての親和性・商品設計
上記の整理を踏まえ、権利等が移転できるアセットは、(A)アセット所有権を裏付資産とするST、(B)事業の運営権やサービス対価債権等の金銭債権を裏付資産とするSTが挙げられます。
一方、権利等が移転できないアセットについても、(C)対象アセットを保有する民間事業者の匿名組合(TK)出資持分のST化、(D)社債やローン債権のST化のように、アセットを管理・運営する民間事業者の債権などをもとにST化することが考えられます。
また、民間事業者が対象アセットの賃借/指定管理を受けて運営する場合には、(E)当該事業者によるコーポレート調達(社債等)のST化も選択肢となります。想定投資家の観点では、 (A)(B)(C) のようなエクイティ性の商品はリターン期待が大きく資金流入が見込まれる一方、地域住民など投資経験が必ずしも豊富でない層に対しては、 (D) (E)のようなデット性商品や特典設計を組み合わせることが有効と考えられます。
出所)本研究会作成
4. その他手法(地方債STの可能性)
行政による資金調達手法の多様化を目的として、地方債のST導入の活用可能性についても検証しました。
地方債は、地方自治法および地方財政法に基づく規律の下で発行され、その資金使途は地方財政法第5条等により、原則として公営事業者(上下水道等)や公共施設(学校・道路等)の建設事業費などに限定されています。
したがって、対象事業によっては地方債の活用も可能と考えられるものの、具体的な適用にあたっては法令解釈や自治体との協議が必要となります。
出所)本研究会作成
※実際の発行に当たっては、法令解釈について総務省との協議を要するほか、地方公共団体とも協議の上、条例による制限・規制の有無等を確認する必要がある。
今後の論点と課題
これまで、公共施設・インフラへの投資は主として一部の民間事業者や金融機関等に限定されていましたが、STの活用により、個人投資家、とりわけ地域住民の投資参画の拡大が期待されます。
一方で、リスク説明の充実や投資家にとって理解しやすい商品設計など、対応すべき課題も多く存在します。今後は、以下の点についてさらなる検討が必要です。
- 案件特性に応じた商品・スキーム設計
- 販売チャネルおよび投資家保護のあり方
- 換金性(流動性)および二次流通の整備
- 決済およびオペレーション体制の構築
今後のフェイズでは、自治体や事業者、地域金融機関等と連携し、具体案件に即した検討およびST発行に向けた協議を進めていきます。本研究会への参画を希望される自治体、地域金融機関・参画事業者につきましては、下記お問い合わせ先までご連絡ください。
TMI総合法律事務所について
TMI総合法律事務所(東京都港区、代表:田中 克郎)は、1990年に創立され、国内業務と渉外業務の双方の領域で豊富な経験を積んだ弁護士725名、弁理士102名(2026年5月1⽇時点)が在籍し、スタッフを含めると1,300名を超える日本最大級の法律事務所です。国内8か所、海外19か所に拠点(現地デスクを含む)を構えるグローバルファームとして、国内外で企業・団体・地域に密着したリーガルサービスを提供しています。法律事務所でありながら、自らベンチャーの設立や地方自治体、大学法人、独立行政法人等との協定を締結するなど、創立以来、常に新しいチャレンジを続けてきました。今までにない新しい法律事務所や弁護士像・弁理士像を追求し、クライアントの幅広いニーズに対して即時にソリューションを提案できるチャレンジングな総合法律事務所を目指しています。
TMI総合法律事務所HP:https://www.tmi.gr.jp/
TIS株式会社について
TISインテックグループのTIS(東京都新宿区、代表取締役社長:岡本 安史)は、金融、産業、公共、流通サービス分野など多様な業種3,000社以上のビジネスパートナーとして、お客さまのあらゆる経営課題に向き合い、「成長戦略を支えるためのIT」を提供しています。50年以上にわたり培ってきた業界知識やIT構築力で、日本・ASEAN地域の社会・お客さまと共創するITサービスを提供し、豊かな社会の実現を目指しています。
TIS株式会社HP:https://www.tis.co.jp/
株式会社 三井住友トラスト基礎研究所について
三井住友トラスト基礎研究所(東京都港区、取締役社長:田口 恒一)は、「都市と不動産」に関する調査研究・提言とコンサルティング業務を行う専門シンクタンクとして1988年に誕生し、当該分野における長年の調査研究を基礎に不動産投資の評価分析に関する調査研究に加え、国内外の不動産市場、不動産金融およびPPP(官民パートナーシップ)・インフラ分野に強みを持つリサーチ&コンサルティングを展開しております。
株式会社三井住友トラスト基礎研究所HP:https://www.smtri.jp/
本件の事業に関するお問い合わせ先
TMI総合法律事務所:担当弁護士:成本 治男(東京弁護士会)
(Haruo_Narimoto@tmi.gr.jp)
TIS株式会社:金融第1事業本部 STLINK担当
(tis_sto@ml.tis.co.jp)
株式会社三井住友トラスト基礎研究所:PPP・インフラ投資調査部
(https://fofa.jp/smtri/a.p/114/)
本件に関する報道関係のお問い合わせ先
TIS株式会社:企画本部 コーポレートコミュニケーション部
(pr@tis.co.jp)
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この調査分析結果の権利はTMI総合法律事務所、TIS株式会社および株式会社三井住友トラスト基礎研究所に帰属しております。
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