Strategy

04グローバル戦略

技術やサービスに国境はない
ならば、世界と手を組み、
未来の技術を獲りに行け

執行役員 グローバル事業部長古庄 建作

グローバル事業拡大ステップ

グローバル事業拡大ステップ

INDEX

01

ペイメントの実績で、ASEANの社会課題に切り込む

SIerにあらず。投資+協創で、
ASEANに強大な
IT企業連合体を築く

TISの海外戦略は、2014年に大きく舵を切った。「SIerとしての役割に留まるのではなく、サービス提供者へと変革し、ASEANトップクラスのIT企業連合体を築こうとしているのです」と、グローバル事業部 事業部長の古庄は説明する。「日本から持ち込む既存の技術で現地の企業をサポートするだけでなく、地元の有力企業との資本・業務提携を通じて先端技術やサービスを協創し、市場を自ら創造して、事業領域拡大を推進しています」。
なぜ、ASEANなのか。「まず、マーケットが大きく、成長余力があること。そして、TISの強みであるペイメント、バンキング領域でのノウハウを生かして、社会課題解決に貢献できるからです」。交通渋滞、貧困格差の問題、食品ロスなど、ASEANには多くの社会課題がある。まずTISが注力したのは、ASEANにおける金融包摂の一翼を担うこと。金融包摂(きんゆうほうせつ)とは、貧困や年齢性別に関係なく、すべての人が金融サービスにアクセスできるようにする取り組みのことだ。「ASEAN諸国には、unbanked と呼ばれる銀行口座を持たない層が、一定数存在します。例えば、インドネシアは2億6000万人ほどの人口を抱えていますが、銀行口座を持っている人は30%程度に過ぎません。そこに対して、我々のノウハウを、どう届けるか」。
一口に“ASEAN”と言っても、社会課題も言語も各種規制も違う。「シンガポールから始まり、タイ、インドネシア、ベトナムと市場を開拓していますが、サービスもソリューションも、国ごとに変わってきます」。シンガポールのように飛躍的な成長を遂げた国もあれば、これから発展を遂げる国もある。「ある国で成功したTISのソリューションやサービスの事例を、何年か後に別の国に届けるといったこともしています」。
日本よりも革新的な技術を持つ国や、世界を驚かせるようなスタートアップが誕生している国もある。「海外で進んでいるものを『見る・知る・聞く・肌で感じる』ことが非常に重要で、グローバル戦略は海外で吸収したものを、日本国内に取り入れるきっかけを作る、という意味もあります。」

Why ASEAN?なぜASEANなのか

02

世界の先端技術を先取り、武器とブランド力を得る

グローバル戦略の
キーワードは、
チャネル、X-Tech、E-Tech、
コンサルティング

グローバル戦略上のキーワードは、4つある。1つ目は、「チャネル」。「海外でのブランド認知度がそう高くないTISが、その国のトップ企業とパートナーになるには、優秀なエンジニアのリソースやビジネススタイルを掴むことが重要になります。まず、タイ国内で、トップクラスのIT企業であるMFECと資本・業務提携(後に連結子会社化)。続いて、タイにおけるSAPコンサルティングのリーディング企業であるI AM Consulting を買収。さらに、インドネシア国内トップクラスのITサービス企業であるAnabaticと資本・業務提携を結び、現地の強力なチャネルを開拓しました」。以降も、現地上場企業、有力企業と、積極的な提携を続けている。
2つ目のキーワードは、「X-Tech(クロステクノロジー)」。「他社とは違う“武器”が欲しいと考え、フィンテックやモビリティテック、ヘルスケアテック、インシュアランステックなどの領域で、TISの強みを生かす戦略です」。現在の中心は、フィンテック。「TISの特に得意な領域にフォーカスした意味もありますが、フィンテック・モバイルバンキング企業の買収を皮切りに、フィンテック関連企業との新規事業協創が続いています」。この分野は、アメリカ、ヨーロッパ、中国、シンガポールなど、エリアを問わず、世界中から先端技術を集めて協創している。
3つ目のキーワードは、「E-Tech(エマージング・テクノロジー)」。「ブロックチェーンやAI、量子コンピューティングなど、急速に次世代の技術が出現しています。我々が得意とするバンキングの領域でも、DeFi(分散型金融)、暗号資産、仮想通貨といった流れが一気に押し寄せてきています。最先端技術は、後々消える技術もあれば、この先、標準として残る技術もある。5年、10年先の未来を見据えて最先端技術を、自分たちで捕まえにいこうというものです」。
最近の例では、東南アジアトップクラスのスーパーアプリケーションを展開しているGrabホールディングスと資本・業務提携をした。出資額は、1.5億ドル(約165億円)。その後GrabはNASDAQへ上場。「Grabの時価総額はTISの数倍にもなります。このような企業の付加価値向上に貢献できるサービスを生み出せれば、ASEANでのTISの価値やブランド力は、益々上がっていくでしょう」。
4つ目のキーワードは、「コンサルティング」。「コンサルティング事業へのバリューチェーン拡大を実現するため、Vector社との資本・業務提携を実施。今回の資本・業務提携を通じて、TISはVector社の東南アジアをはじめとしたグローバルにおけるビジネス拡大をサポートするとともに、ITサービスの分野におけるノウハウを提供することで同社のサービスラインアップ拡充に貢献します。
また、全世界においてコンサルティングとテクノロジーの融合が進む中、Vector社が持つ経営コンサルティング領域におけるノウハウを活用することで、当社グループのインド、日本、ASEAN地域、および中国のお客様に対するITサービスの高付加価値化の実現を目指します」。

03

破壊的テクノロジーで変化速度を劇的に上げよ

破壊的テクノロジーを循環させ、
変化の速度を劇的に上げる

E-Techに関しては、5つの「破壊的テクノロジー」にフォーカスし、集中投資を行っている。5つとは、ロボティクス、分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)、データマイニング、AI、量子コンピューティングである。
「ロボットやIoTを社会の接点として課題やデータを集め、分散台帳で様々なデータの管理方法を創出し、データマイニングで価値あるデータを抽出する。量子コンピューティングで解いた学習データを、AIロボットに読み込ませ、賢くなったロボットが社会を変えていく。5つの破壊的テクノロジーを循環させることで、変化の速度を劇的に上げていけると考えています」。
「豊富な資金を持ちながら、投資先企業の独立性を尊重しつつ、高度なノウハウも提供できる会社として、海外でのTISの価値は、かなり高まってきている」と、古庄は実感している。「パートナーを探すとき、どの企業にコンタクトしても、TISの実績を事前に知った上で会って話を聞いていただけるのです。2014年までのTISの海外事業は、アメリカや中国が中心でASEANにはシンガポール拠点のみでしたが、現在では、タイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、マレーシアに拠点があり、ASEANトップクラスのIT企業連合体になるという目標に向かって邁進しています」。
グローバル事業は今後、新たなM&Aを積み重ねながら、2026年にグローバル連結売上高1,000億円を目指している。「ASEANトップクラスのIT企業連合体を実現した後は、世界各国へ海外事業を拡大していきたいと考えています」。

04

母国語で仕事ができる人材こそ海外で戦える

グローバル部門で活躍するには、
国内で通用する人材になること

「まず、母国語で仕事ができる人」。TISのグローバル戦略に必要な人材についてたずねると、古庄はこう断言した。「国内の仕事で戦略を立て、自分の言葉で考えを発信し、人を動かし、核となる強みを持っていなければ、海外では何もできないでしょう。私たちが交渉する相手は、海外のMBAホルダーであり、名だたる起業家であり、もちろんIT技術やグローバルトレンドを貪欲に追いかけており、加えてVISIONを発信して世の中を動かす力を持っている人たちです。彼らと対等に話ができて、『TISと組めば面白いことができる』と思ってもらえなければなりません」。
「エンジニアなら足元の技術を固め、相応の規模のプロジェクトマネジメントを経験しておく。営業なら、会社経営ができるくらいの知識と経験を蓄える、コンサルタント職なら、中長期戦略を立て、お客様の経営層を動かせるくらいまでの経験を積むなど、それぞれの領域で自分の核となる強みを作った上で、足りない知識を補っていく必要があると思います」。
古庄自身も、カード基幹システムの開発を皮切りに、プロジェクトマネージャー、営業、コーポレート本部での企画など、多彩な経験を経て今がある。「M&Aに関心を持ってからは、社会人経験15年以上の学生が集まるエグゼクティブMBAを受講し、取得しました」。TISでは、海外進出する日本企業を現地で支援する社員もいれば、オフショア開発で日本にいながらグローバルに仕事をする勘所を養っている社員もいる。「確かなことは、TISの事業には、国境がないということ。国内外の場所に関係なく、常に世界に向けてアンテナを張り、学び続けることが海外で活躍する道につながるのだと思います」。